2020年05月16日

Windows 10上に囲碁勉強環境を構築する - 「GLOBIS-AQZ」編

グロービスからオープンソース化のアナウンスが出たGLOBIS-AQZ」、「AQ」GitHubレポジトリの日本語の説明によれば、

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「GLOBIS-AQZ」はDeep Learning技術を利用した囲碁の思考エンジンです。
日本ルール6目半と中国ルール7目半の両方に対応していることが特徴です。

このプログラムはGLOBIS-AQZプロジェクトの成果を利用しています。

GLOBIS-AQZは、開発:株式会社グロービス、山口祐氏、株式会社トリプルアイズ、開発環境の提供:国立研究開発法人 産業技術総合研究所、協力:公益財団法人日本棋院のメンバーによって取り組んでいる共同プロジェクトです。このプログラムは、GLOBIS-AQZでの試算を活用しています。


オープンソース・ソフトウェアですので、どなたでも無料で使用することができます。
対局・解析のためのプログラムですので、「Lizzie」「Sabaki」「GoGui」といったGUIソフトに設定して利用してください。
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とのこと。
「AQ」のバージョンとしては「v4.0.0」というあつかいになるようなので、ここでは「AQ v4.0.0」として話をすすめていくことにします。
NVIDIA製GPUを搭載したコンピュータに「CUDA」環境を構築して、コンピュータ囲碁プログラムを動かすというのはとても楽しい作業で、いろいろ動かしてはみるんだけど、やっぱりhatakazuはなかでも「AQ」がいちばん好きでずっと応援しています。
開発者が日本人ということで当初より日本ルールに対する親和性が感じられましたが、今回ははっきりと「日本ルール+コミ六目半」対応を打ち出しており、こんなに強いコンピュータ囲碁プログラムが完全日本仕様で動作するというだけでも、日本の囲碁を楽しむすべてのひとにとってかぎりなく大きなプレゼントのようなものだと思っています。

1. 前提となる環境
インストールするコンピュータの仕様は以下のとおり。

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Dell Inspiron 14 7472 Core i7モデル 18Q42P
OS:Windows10 Home 64bit
CPU:インテル Core i7-8550U (4Mキャッシュ、最大4.0GHz)
GPU:NVIDIA GeForce MX150 GDDR5 2GB
メモリー:8GB DDR4 2400MHz(最大16GB)
保存装置:128GB SSD + 1TB 5400rpm HDD
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「AQ」をインストールするさいの動作要件は、以下のように記述されています。

・OS : Windows 10, Linux (64-bit)
・GPU : Nvidia's GPU (Compute Capability >3.0)
・CUDA Toolkit 10.0 or 10.2
・TensorRT 7.0.0

64bit版のWindows 10およびLinuxに対応、Compute Capability 3.0以上のNVIDIA製GPUをそなえたコンピュータで、「CUDA 10.0 or 10.2」+「TensorRT 7.0.0」環境が必要とのこと。
これから「AQ v4.0.0」をインストールするにあたっては、あらかじめ「Windows 10上に囲碁勉強環境を構築する - 準備編」の記述のとおりに「CUDA 10.2」+「cuDNN 7.6.5」+「TensorRT 7.0.0」環境が構築されていることを前提としています。
なお、「AQ」として公開されているのはGUIをもたない囲碁思考エンジン部分のみなので、グラフィカルに対局や棋譜分析をおこなうためにはGTPを解釈できる囲碁GUIと連携させる必要があります。

2. 「AQ」インストールファイルのダウンロード
「AQ」の現行バージョンは「v4.0.0」で、「AQ」GitHubレポジトリの「Releases」ページから「AQ_windows.zip」をクリックして、Windows用インストールファイル「AQ_windows.zip」を取得します。

3. 「AQ」のインストール
ダウンロードした「AQ_windows.zip」ファイルを右クリックして「すべて展開」を選ぶと、「AQ_windows」フォルダができて、さらにそのなかに「AQ」フォルダがあります。
この「AQ」フォルダのなかにGTP思考エンジン本体である「AQ.exe」や設定ファイル「config.txt」などがふくまれているので、この「AQ」フォルダをそのまましかるべき場所(たとえば「C:\Users\username\AQ」など)に設置すれば、インストール作業は終了です。

4. 「AQ」の設定
「AQ」フォルダのなかにGTP思考エンジン本体「AQ.exe」といっしょに設定ファイル「config.txt」が置かれており、この設定ファイル「config.txt」の内容を編集することで、次回起動時以降「AQ」のふるまいを変更することができます。
グロービスのオープンソース化アナウンスのなかで大橋拓文六段の「今回オープンソース化されるGLOBIS-AQZは日本ルールでの自己対戦を1千万局以上行いました。これまでほとんどの囲碁AIは中国ルール、コミ7目半でトレーニングされていたので、日本ルール特有のケースとコミ6目半に対応したGLOBIS-AQZは画期的です」というコメントが出ていましたが、「日本ルール」と「コミ六目半」への設定変更は、このファイルにいくつかの変更をほどこすことで実現します。
(じっさいには設定ファイル「config.txt」はいじらず、思考エンジン「AQ.exe」を呼び出すときに、そのつどオプションで指定することもできます。方法は連携する囲碁GUIごとに後述。)
以下に、編集する可能性のある項目だけ抜き出して、各項目の意味と設定方法を記述します。


#### --- Rule --- ####

# Rule of game.
# 0: Chinese, 1: Japanese, 2: Tromp-Tralor
# --rule=0
--rule=1 # 基本ルールを日本式に設定する。

# Komi. Use 6.5 for the Japanese rule.
# --komi=7.5
--komi=6.5 # 日本ルールを選択した場合は、コミも六目半に設定する。

#### --- Time control --- ####

# Main time. (in seconds)
--main_time=0.0 # 秒読みにはいるまえのいわゆる持ち時間を秒単位で入力。秒読みのみの場合は「0」に設定する。

# Japanese byoyomi time. (in seconds)
--byoyomi=3.0 # 持ち時間が切れたあとの秒読みの長さを秒単位で入力。秒読みなし切れ負けの場合は「0」に設定する。

# Threshold of remaining time that AQ returns
# a move without search. (in seconds)
# Used in 'sudden death' time setting.
--emergency_time=15.0 # 秒読みなしの場合に、持ち時間がここで指定した秒数より短くなると、ノータイムで打ちはじめる。

#### --- Search --- ####

# Whether using pondering.
# --use_ponder=on
--use_ponder=off # 相手の手番でも考慮する「ponder」機能を使う場合は「on」に(「Lizzie」で利用する場合は必須)、使わない場合は「off」に設定する。


5. GTP対応囲碁GUIとの連携方法
「AQ」として公開されているのはGUIをもたない囲碁思考エンジン部分のみなので、グラフィカルに対局や棋譜分析をおこなうためにはGTPを解釈できる囲碁GUIと連携させる必要があります。
「AQ」フォルダをたとえば「C:\Users\username\AQ」(「username」はお使いのユーザ名)に設置したとして、「C:\Users\username\AQ\AQ.exe」が、囲碁GUIに登録するべきGTP思考エンジンへの絶対パスになります。

5-1. GTP対応囲碁GUI「GoGui」への思考エンジン登録
メニューバーの「プログラム」から「新規プログラム」を選び、あらわれた画面の「コマンド:」欄に囲碁思考エンジンの絶対パスを入力します。
たとえば「AQ」フォルダを「C:\Users\username\AQ」に設置した場合、「コマンド:」欄に入力する絶対パスは「C:\Users\username\AQ\AQ.exe」のようになります。
オプションを指定するときは、「C:\Users\username\AQ\AQ.exe --rule=1 --komi=6.5 --byoyomi=10 --use_ponder=off」のように、一行でつづけて書きます。
上記は「日本ルール、コミ六目半、一手10秒で着手、ponder機能無効」設定の例ですが、「AQ」フォルダにある設定ファイル「config.txt」のほうでおなじように設定していれば、「コマンド:」欄への入力は「AQ.exe」の絶対パスだけで問題ありません。
「OK」ボタンを押下して何度か「待機」をクリックしながら待っていると、ステイタスバーに表示されていた「プログラムの開始中」メッセージが消えて新規プログラム登録画面が開くので、「ラベル:」欄にたとえば「AQ」などと入力して「OK」ボタンを押下します。
これで登録完了となるので、次回以降はメニューバーの「プログラム」 -> 「プログラムの起動」とすすんで「AQ」を選ぶと、「AQ」が起動して対局や棋譜分析に利用できるようになります。
登録した囲碁思考エンジン「AQ」と対局するには、「AQ」を起動した状態で、メニューバーの「対局」から「碁盤サイズ」「置石」「コンピュータの手番」を指定したうえで、「新規対局」をクリックします。
検討したい局面を指定して、そこで「AQ」がどう打つかをみることもできます。
「AQ」を起動したあと、メニューバーから「コンピュータの手番」を「なし」にして、どんどん石を置いていって対象となる局面をつくり、黒番の局面なら「AQに黒を打たせる」、白番の局面なら「AQに白を打たせる」アイコンをクリックします。
そのさい「GTPシェル」を開いておけば、「GoGui」と「AQ」との通信内容が表示されるので、なにか問題がある場合は問題解決の手がかりを得ることができます。

5-2. 「Sabaki」への思考エンジン登録
メニューバーの「Engines」から「Manage Engines」を選び、あらわれた画面で「Add」をクリックします。
「(Unnamed Engine)」と表示されている欄にカーソルをもっていって、わかりやすい表示名を、そして「Path」欄に囲碁思考エンジンの絶対パスを入力します。
たとえば「AQ」フォルダを「C:\Users\username\AQ」に設置した場合、「(Unnamed Engine)」欄にカーソルをもっていって「AQ」と入力、「Path」欄に絶対パス「C:\Users\username\AQ\AQ.exe」を指定します。
「(No arguments)」欄には「--rule=1 --komi=6.5 --byoyomi=10 --use_ponder=off」のようにオプションを指定しますが、「AQ」フォルダにある設定ファイル「config.txt」のほうでおなじように設定していれば、ここは空欄のままで問題ありません。
登録した「AQ」と対局するには、メニューバーの「File」から「New」をクリックします。
開いた画面で「Board Size」「Handicap」「Komi」を指定のうえ、黒番と白番それぞれの担当者を選択します。
自分が担当する手番は「Manual」を選択、「AQ」に担当させる手番は登録されている思考エンジンの表示名から「AQ」を選んで、「OK」ボタンを押下します。
「Sabaki」にほかの囲碁思考エンジンを登録しておいて、「AQ」をほかの思考エンジンと対局させることもできます。
その場合は、対局させる思考エンジンの両方について「ponder」機能を無効化するように設定し、互いの思考をさまたげないかたちで対局をおこなう必要があります。

6. 問題点
インストールして動かしてみて、いくつかうまくいかないところがあるので、備忘として列記しておきます。
解決したら追記します。

6-1. 「Lizzie」への対応
「AQ v4.0.0」から「Lizzie」との連携が可能になり、「Lizzie」のエンジン登録画面で「{your_aq_folder}/AQ.exe --lizzie」コマンドを指定すればO.K.ということになっているが、「--lizzie」オプションをつけてもつけなくても「Lizzie」とはうまく通信できていない。


参考ウェブページ一覧表(順不同)

「AQ」開発者である山口祐さんのtwitter「https://twitter.com/ymg_aq」
https://github.com/ymgaq/AQ
https://github.com/ymgaq/AQ/releases
https://github.com/ymgaq/AQ/blob/master/README_JP.md


posted by hatakazu at 13:49| Comment(0) | 囲碁ソフトのこと | 更新情報をチェックする

Windows 10上に囲碁勉強環境を構築する - 「Lizzie」応用編

「Lizzie」はいろいろな要素を自分なりに設定して自由に楽しめる設計になっていますが、なかでもおもしろいのが「設定」 -> 「エンジン」で「Leela Zero」や「KataGo」にべつのネットワークファイルを読みこませたり、「Leela Zero」とおなじ方法で「Lizzie」と情報をやりとりできるほかのコンピュータ囲碁プログラムを登録したりできるところです。
つまり、ネットワークを変更したり(「Lizzie」と通信できる機能をそなえているかぎりにおいて)ほかのコンピュータ囲碁プログラムを登録したりすることで、自分の好みの棋風をもつコンピュータ囲碁プログラムを「Lizzie」のフレンドリーなインタフェースを介して利用できるということです。
「Lizzie」に最初からふくまれている「Leela Zero」および「KataGo」についても、すこしだけ設定を変更するだけで、いろいろな使いかたがを実現することができます。
ここでは「Leela Zero」のネットワークファイルを変更する方法から、「KataGo」でネットワークファイルのみならずプログラム本体まで置きかえて、日本ルールで囲碁を勉強するのに最適な環境をととのえるところまでを記述していきます。

1. 「Leela Zero」の設定
「Lizzie」をインストールすると、「Lizzie」とのやりとりのために特別に設計された「Leela Zero」と、「Leela Zero」が利用するネットワークファイルがついてきます。
このネットワークファイルは「lznetwork.gz」という名前で「lizzie」フォルダに置かれており、標準エンジン設定「エンジン0: ./leelazero/leelaz --gtp --lagbuffer 0 --weights lznetwork.gz」の「--weights lznetwork.gz」部分によって、呼び出される仕組みになっています。
ということは、「lznetwork.gz」という名前はそのままに中身をべつのネットワークファイルに置きかえてしまうか、あるいはべつの名前のネットワークファイルを用意してそれを呼び出すようにエンジンを設定すれば、「Leela Zero」はいろいろなネットワークファイルを利用して思考することができるわけです。
いくつか特徴的なものを紹介しておきます。

・常に最新=最強の学習ずみネットワークを使う
たとえば「Leela Zero」プロジェクトでは「https://leela.online-go.com/networks/」に歴代のネットワークファイルが保管されており、ここから最新のネットワークファイル「best-network.gz」をダウンロードできるので、それを「lizzie」フォルダに置いて「エンジンX: ./leelazero/leelaz --gtp --lagbuffer 0 --weights best-network.gz」と設定すれば「エンジンX:」は「best-network.gz」を呼び出すことになります。
定期的に「best-network.gz」ファイルを更新するだけで、「Lizzie」を立ち上げれば常に最新=最強の「Leela Zero」で対局および棋譜分析を楽しむことができる、と考えただけでもわくわくしてきませんか。

・人間の棋譜から学んで人間にちかい打ちかたをするネットワーク
人間の対局データを使って学習したネットワーク「best_v1.txt.zip」ファイルを取得し、展開してえられる「weights.txt」ファイルを「lizzie」フォルダに移動して、「human-network」などのわかりやすい名前に変更しておきます。
「エンジンX: ./leelazero/leelaz --gtp --lagbuffer 0 --weights human-network」のように設定すれば、より人間に打ちかたに近い打ちかたをする「Leela Zero」と対局できることになります。
Leela Master Weight」のどれかを使ってみるのもおもしろいでしょう。

・Facebook「ELF OpenGo」プロジェクトで公開されているネットワーク
Facebook「ELF OpenGo」のGitHubレポジトリから学習ずみネットワークをダウンロード、公開されているpythonスクリプトで処理して「Leela Zaro」で読み込めるネットワークファイルに変換し、「ELF-network-v2」などのわかりやすい名前に変更しておきます。
歴史的な意味のある「v0」「v1」「v2」の三つが公開されており、強い弱い以前にそれぞれかなり棋風がちがうようなのですが、ふつうはいちばん新しい「v2」を使えば問題ありません。

pretrained-go-19x19-v0.bin」 -> ファイル名の例「ELF-network-v0」
pretrained-go-19x19-v1.bin」 -> ファイル名の例「ELF-network-v1」
pretrained-go-19x19-v2.bin」 -> ファイル名の例「ELF-network-v2」

「ELF-network-v2」ファイルを「lizzie」フォルダに置いて、「エンジンX: ./leelazero/leelaz --gtp --lagbuffer 0 --weights ELF-network-v2」と設定すれば、「Lizzie」は「Leela Zero」経由で「ELF OpenGo」のネットワークファイルを使って思考します。

「ELF OpenGo」のネットワークは「Leela Zero」のネットワークファイル保管庫にも取りこまれているので、それをダウンロードしてくるだけでおなじことを実現することもできます。
「v0」を「Leela Zero」で利用できるように変換したもの -> ファイル名の例「ELF-network-v0.gz」
「v1」を「Leela Zero」で利用できるように変換したもの -> ファイル名の例「ELF-network-v1.gz」
「v2」を「Leela Zero」で利用できるように変換したもの -> ファイル名の例「ELF-network-v2.gz」


2. 「KataGo」の設定
「KataGo」はコンピュータ囲碁プログラムとしては比較的新しいプロジェクトで、プログラムの完成度においても囲碁の強さという点においても、急速に改善を重ねてきたといっていいでしょう。
プログラムについていえば2019年10月の時点で「KataGo」のバージョンは「v1.2」で、「Lizzie 0.7.2」にはOpenCLバージョン「KataGo v1.2」が採用されているわけですが、利用できるネットワーク形式に制限があったり、このあとに追加された機能(なかでも日本ルール対応は重要)を使えない不便があったりします。
また、そのときに同梱されたネットワークファイルはまだそれほど学習を経ておらず、それから半年たったいま公開されている最新ネットワークのほうがはるかに強くなっています。

Warning: the version of KataGo packaged directly with Lizzie is fairly OLD. The net is quite weak compared to the latest nets, and the executable may not support the latest models or features. Download a newer version of both the net and executable from the releases page.


そこでここではまず、「KataGo」プログラムじたいを新しいものと交換することで機能の強化をはかったうえで、ネットワークファイルを置きかえてかんたんに「KataGo」を強くする作業をおこないます。
「Leela Zero」のときのようにとっととネットワークファイルを置きかえてしまわないのは、前述したとおり古い「KataGo」では利用できるネットワーク形式に制限があり、そのままでは現在提供されている最新=最強のネットワークファイルを使えないからです。

2.1 「KataGo」プログラムの更新
作者がすすめにしたがって素直に「Releases」ページへいき、最新バージョン「v1.4.2」を探して、OpenCLバージョンの圧縮ファイル「katago-v1.4.2-opencl-windows-x64.zip」をダウンロードします。
ダウンロードしたファイルを展開すると、「katago-v1.4.2-opencl-windows-x64」フォルダができるので、このフォルダをそのまま「lizzie」フォルダに移動します。
ここからすこし注意を要する作業になりますが、現時点で「lizzie」フォルダには、①最初からはいっていた「katago」フォルダと②たったいま移動してきた「katago-v1.4.2-opencl-windows-x64」フォルダが存在します。
この状態でまず、もう使わない古い「KataGo v1.2」の①「katago」フォルダを「katago-old」のような別名に変えてしまい、そのあとで、これから使う新しい「KataGo v1.4.2」の②katago-v1.4.2-opencl-windows-x64」フォルダを「katago」に変更します。

①「katago」フォルダ -> 「katago-old」フォルダ
②「katago-v1.4.2-opencl-windows-x64」フォルダ -> 「katago」フォルダ

これによって「KataGo v1.2」が「KataGo v1.4.2」に置きかえられ、それ以外の変更はないので、次に「Lizzie」を起動したときから「エンジン1: ./katago/katago gtp -model katanetwork.gz -config katago-gtp10.cfg」は「KataGo v1.4.2」を呼び出すことになります。
問題なく動作するようなら、古い「KataGo v1.2」をふくむ「katago-old」フォルダは、そのうち削除してしまってもかまいません。

2.2 「KataGo」ネットワークの更新
ようやく準備がととのったので、次は「KataGo」にべつのネットワークを利用して思考させる設定をすすめます。
「KataGo」でも「Leela Zero」の場合とおなじように「katanetwork.gz」という名前の標準ネットワークファイルが「lizzie」フォルダに置かれており、標準エンジン設定「エンジン1: ./katago/katago gtp -model katanetwork.gz -config katago-gtp10.cfg」の「-model katanetwork.gz」部分によって、呼び出されています。
「katanetwork.gz」という名前はそのままに中身をべつのネットワークファイルに置きかえてしまうか、あるいはべつの名前のネットワークファイルを用意してそれを呼び出すようにエンジンを設定すれば、「KataGo」にべつのネットワークファイルを使って思考させることができるのもおなじです。
「KataGo」の歴代ネットワークファイルは「katago-public/g170/neuralnets」に保管されているので、そこからダウンロードしてきたネットワークファイルを自由に使うことができます。
ここでは最近「KataGo v1.4.0」と同時に公開された、117日間トレーニングずみの最新ネットワークファイルをダウンロードして、読みこませてみることにします。
それぞれことなる設計のネットワークファイルで、コンピュータの性能によっても強さに差が出てくるので、試してみて自分の環境に合いそうなものを採用するといいでしょう(基本的にはGPU性能が上がるほど下のものが強くなるはず)。

g170-b20c256x2-s4384473088-d968438914.bin.gz - The latest and final semi-zero 20-block net (continuing extended training on games from the bigger nets). -> ファイル名の例「kata20x256.bin.gz」
g170-b30c320x2-s3530176512-d968463914.bin.gz - The latest and final semi-zero 30-block net. -> ファイル名の例「kata30x320.bin.gz」
g170-b40c256x2-s3708042240-d967973220.bin.zp - The latest and final semi-zero 40-block net. -> ファイル名の例「kata40x256.bin.gz」

こうしてダウンロードした「kata20x256.bin.gz」「kata30x320.bin.gz」「kata40x256.bin.gz」を「lizzie」フォルダへ移動し、エンジン設定で「KataGo」がこのネットワークを呼び出すように、以下のように登録しておきます。

「エンジンx: ./katago/katago gtp -model kata20x256.bin.gz -config ./katago/default_gtp.cfg」
「エンジンy: ./katago/katago gtp -model kata30x320.bin.gz -config ./katago/default_gtp.cfg」
「エンジンz: ./katago/katago gtp -model kata40x256.bin.gz -config ./katago/default_gtp.cfg」


もともとの標準エンジン設定標準エンジン設定「エンジン1: ./katago/katago gtp -model katanetwork.gz -config katago-gtp10.cfg」と比べると、「-confg ./katago/default_gtp.cfg」部分も同時に変更していますが、それについては次の日本ルールのところで説明します。

2.3 「KataGo」に日本ルールを適用
最新のネットワークファイルを使うために最新の「KataGo」をインストールしましたが、「KataGo」では「v1.3」で日本ルールへの対応を打ち出し、「lizzie」フォルダにある「katago-gtp10.cfg」でその挙動を制御できるようになっています。
すばらしい!
設定ファイルはエンジン設定の「-config katago-gtp10.cfg」部分で指定していますが、「Lizzie」標準のこの設定ファイルは古い(つまり日本ルール対応以前の)「KataGo v1.2」用のものなので、ここを「-config katago/default_gtp.cfg」のように変更することで新しい(つまり日本ルール対応可能な)「KataGo v1.4.2」についてくる設定ファイルを使えるようになります。
基本ルールにかかわる設定ファイルの変更は以下の赤字部分で、日本ルールの適用はデフォルトの「rules = tromp-taylor」をコメントアウトして、「rules = japanese」と宣言するだけです。
個別に指定するなら、青字で示した三行のコメントをはずし、指定を有効化する方法もあります。

# Default rules------------------------------------------------------------------------------------
# See https://lightvector.github.io/KataGo/rules.html for a description of the rules.
# These rules are defaults and can be changed mid-run by several custom GTP commands.
# See https://github.com/lightvector/KataGo/blob/master/docs/GTP_Extensions.md for those commands.

# Some other legal values are: "chinese", "japanese", "korean", "aga", "chinese-ogs", "new-zealand".
# KataGo does not claim to exactly match any particular human ruleset, but KataGo will try to behave
# as closely as possible given the rules it has implemented.
# rules = tromp-taylor
rules = japanese

# Use the below instead to specify an arbitrary combination of individual rules.

# koRule = SIMPLE # Simple ko rules (triple ko = no result)
# koRule = POSITIONAL # Positional superko
# koRule = SITUATIONAL # Situational superko

# scoringRule = AREA # Area scoring
# scoringRule = TERRITORY # Territory scoring (uses a sort of special computer-friendly territory ruleset)

# taxRule = NONE # All surrounded empty points are scored
# taxRule = SEKI # Eyes in seki do NOT count as points
# taxRule = ALL # All groups are taxed up to 2 points for the two eyes needed to live

# multiStoneSuicideLegal = true #Is multiple-stone suicide legal? (Single-stone suicide is always illegal).


設定ファイルを上記のように変更したあとで「Lizzie」から「KadoGo」を起動し、対局するなら「n」キーを押して新規対局を設定する画面、棋譜分析するなら「i」キーを押して棋譜情報を設定する画面を開いて、コミを「6.5」に指定してやります。

3. 「KataGo」をOpenCLバージョンからCUDAバージョンに切り替える
Windows 10上に囲碁勉強環境を構築する - 準備編」の記述のとおりに「CUDA 10.2」+「cuDNN 7.6.5」+「TensorRT 7.0.0」環境が構築されていれば、「KataGo」については「Lizzie」に標準添付されているOpenCLバージョンだけではなくて、あらたにCUDAバージョンをインストールして「Lizzie」から利用することができます。
ダウンロードできる「KataGo」の実行ファイルは、「CUDA 10.1」+「CUDNN 7.6.1」環境でコンパイルされたようですが、より新しい「CUDA 10.2」+「cuDNN 7.6.5」環境で問題なく動作することは確認ずみです。
CUDAバージョン「KataGo」のインストールは、「2.1 『KataGo』プログラムの更新」でまとめた手順をそのまま、「katago-v1.4.2-opencl-windows-x64」をすべて「katago-v1.4.2-cuda10.1-windows-x64」に読みかえて実行するだけです。
ネットワーク更新については「2.2」で、日本ルール適用についても「2.3」で記述した手順が、そのまま使えます。
posted by hatakazu at 08:30| Comment(7) | 囲碁ソフトのこと | 更新情報をチェックする
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